配偶者の信仰の自由
配偶者の宗教活動を原因とする離婚請求の場合,配偶者の信仰の自由との関係で,その判断は慎重になります。夫婦の一方が過度に宗教活動に専念した結果,夫婦関係が悪化し婚姻関係が破綻したと言える場合には,「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と認められます。婚姻関係が破綻したかどうかの判断は,「宗教活動の内容や程度,信仰心の程度,これらの家庭や第三者に及ぼす影響の有無,配偶者の理解・寛容の有無,別居後の信仰心・宗教活動の程度,別居期間,婚姻意思の継続の有無」等を総合的に考慮して判断されます(別居期間が相当期間になれば,夫婦関係の破綻を認める傾向にあります)。
Yには自己の宗教活動をXとの関係を円満にするために自粛しようとの気持ちは全くないこと、仮にXとYとが同居を再開したとしても,Yが現に行っている宗教活動の状況からすれば日常の家事や子供の教育に相当の支障が出てくるのは必至であり、Xがこれを容認することは全く期待できないこと、XのYに対する不信と憎悪の念が強く離婚の意思が固いこと、Yは離婚の意思がなくXの言うことにも従いたいというが、別居期間はすでに八年に及んでおり(もっとも、当初の二、三年は両者間に若干の交渉があったが)現実に夫婦関係が円満に回復するという見込みは全くないことが明らかであり、XとYとの間の婚姻関係は既に完全に破綻しているものと認めるのが相当である。 ところで、信仰の自由は夫婦といえども互いに尊重しなければならないことはいうまでもないが、しかし、信仰の自由といっても、夫婦として共同生活を営む以上自ずから節度かあるべきものであり、相手方の意見や立場を尊重して夫婦及び家族間の関係か円満に行くように努力し、行き過ぎは慎むべきものである。これを本件についてみるのに、前記認定事実によれば、Yの行動は、いささか限度を超えるところがあり夫婦間の協力扶助義務に反しているといわざるを得ない。XにもYの信仰の自由を尊重する寛容さか足りない面がないとはいえないが、Yの行動と対比すれば、婚姻関係破綻につきXを主たる有責配偶者であるとみることはできない。 以上によれば、Xの本件離婚請求は、民法七七〇条一項五号所定の事由に該当するので、これを認容すべきものである。 |
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