事 案 |
被上告人が、戸籍上同人の嫡出子とされている上告人に対し、両者の間の親子関係不存在の確認を求める訴えを提起した事案 |
争 点 |
婚姻関係が終了していることと嫡出の推定を受ける子に対する親子関係不存在確認の訴えの許否 |
判 旨 |
民法七七二条により嫡出の推定を受ける子につき夫がその嫡出であることを否認するためには、専ら嫡出否認の訴えによるべきものとし、かつ、右訴えにつき一年の出訴期間を定めたことは、身分関係の法的安定を保持する上から十分な合理性を有するものということができる(最高裁昭和五四年(オ)第一三三一号同五五年三月二七日第一小法廷判決・裁判集民事一二九号三五三頁参照)。そして、【要旨】夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情があっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要が当然になくなるものではないから、右の事情が存在することの一事をもって、嫡出否認の訴えを提起し得る期間の経過後に、親子関係不存在確認の訴えをもって夫と子との間の父子関係の存否を争うことはできないものと解するのが相当である。 もっとも、民法七七二条二項所定の期間内に妻が出産した子について、妻が右子を懐胎すべき時期に、既に夫婦が事実上の離婚をして夫婦の実態が失われ、又は遠隔地に居住して、夫婦間に性的関係を持つ機会がなかったことが明らかであるなどの事情が存在する場合には、右子は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出子に当たるということができるから、同法七七四条以下の規定にかかわらず、夫は右子との間の父子関係の存否を争うことができると解するのが相当である(最高裁昭和四三年(オ)第一一八四号同四四年五月二九日第一小法廷判決・民集二三巻六号一〇六四頁、最高裁平成七年(オ)第二一七八号同一〇年八月三一日第二小法廷判決・裁判集民事一八九号四九七頁参照)。 しかしながら、本件においては、右のような事情は認められず、他に本件訴えの適法性を肯定すべき事情も認められない。 |