事 案 |
被上告人が、上告人の意思に基づくことなく、勝手に同人の署名欄に同人の氏名を記載し、かつ、押印して、同人と婚姻する旨の届書を作成し、昭和27年11月17日これを所轄の戸籍事務管掌者に提出した事案。なお、右届出当時、上告人と被上告人との間に夫婦としての実質的生活関係は存在していた。また、上告人において、昭和29年3月頃右届出を知った後もその効力を争うことなく、同人が昭和35年9月頃被上告人と別居するまで右生活関係を継続し、昭和39年7月に至って突如家庭裁判所に婚姻無効の調停申立をした。もっとも、右届出を知った後右調停申立までの間において、上告人は、特別区民税の申告書に被上告人を妻と記載してこれを提出し、長女の結婚披露宴に被上告人と共に出席し、D共済組合から被上告人を妻として認定されながら異議を唱えず、同人に医療のため右趣旨の記載のある組合員証を使用させるなど、前記婚姻の届出を容認するがごとき態度を示していた。 |
争 点 |
届出意思の欠缺による婚姻の無効とその追認の効力 |
判 旨 |
事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成提出した場合においても、当時右両名に夫婦としての実質的生活関係が存在しており、後に右他方の配偶者が右届出の事実を知つてこれを追認したときは、右婚姻は追認によりその届出の当初に遡つて有効となると解するのを相当とする。 |
理 由 |
右追認により婚姻届出の意思の欠缺は補完され、また、追認に右の効力を認めることは当事者の意思にそい、実質的生活関係を重視する身分関係の本質に適合するばかりでなく、第三者は、右生活関係の存在と戸籍の記載に照らし、婚姻の有効を前提として行動するのが通常であるので、追認に右の効力を認めることによって、その利益を害されるおそれが乏しいからである。 |
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