事 案 |
X (妻―原告・被控訴人・上告人)とY1(夫―被告・控訴人・被上告人)は昭和32 年6 月3 日に婚姻の届出をした夫婦であって,その間に2 子がある。Y1 は昭和47 年3 月21 日にX との協議離婚を届け出た後,同年7 月22 日にY2(被告・控訴人・被上告人)と再婚し,翌年にはY2 との間に1 子をもうけた。 昭和48 年ころ,X は,Y1 との協議離婚が無効であるとして離婚無効確認の訴えを提起した。X の主張は,自ら署名捺印した離婚届書をY1 に渡したが,これはY1 の欺罔によるもので,これに気付いたX が離婚意思を撤回したにもかかわらず,Y1 はこれを無視して離婚届を提出したというものである。この訴えは昭和52 年にX が勝訴して終了し,協議離婚の無効が確定した。これを受けてX は,Y1・Y2 の婚姻が民法732 条に違反する重婚であるとして,その取消しを求めて本件訴えを提起した。第1 審(大阪地判昭和53・7・18 民集36 巻8 号1645 頁参照)は,X の請求を認容し,Y1・Y2 の婚姻を取り消し,両者間の子の親権者をY2 とする判決をした。 これに対してY1・Y2 は協議離婚(昭和53 年7 月27日届出)をしたうえで控訴し,本件取消請求の目的である婚姻は協議離婚により解消したのであるから,取消しを求める必要性は消滅したと主張した。 控訴審(大阪高判昭和53・12・13 判タ380 号151 頁)は,Y らの控訴を認容し,本件訴えを却下したことから,X が上告した。X は,上告理由において,婚姻取消しと離婚とではともに将来に向かって婚姻を解消する点では共通するが,婚姻取消しが不完全に成立した婚姻の成立過程の瑕疵をとがめようとするものである点で社会的意味が全く異なること,また効果においても両者は財産関係で顕著な差異がある(民法748 条2 項・3項)などと主張した。 |
争 点 |
離婚により解消したのちの重婚の取消し |
判 旨 |
重婚の場合において,後婚が離婚によって解消されたときは,特段の事情のない限り,後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である。 |
理 由 |
婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748 条,749 条),離婚後,なお婚姻の取消を請求することは,特段の事情がある場合のほか,法律上その利益がないものというべきだからである。 |
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