事件名 |
離婚等 |
争 点 |
有責配偶者からの離婚請求において別居期間が相当の長期間に及んだものとされた事例 |
判 旨 |
有責配偶者からの民法七七〇条一項五号所定の事由による離婚請求の許否を判断する場合には、夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んだかどうかをも斟酌すべきものであるが、その趣旨は、別 居後の時の経過とともに、当事者双方についての諸事情が変容し、これらのもつ社会的意味ないし社会的評価も変化することを免れないことから、右離婚請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮すべきであるとすることにある(最高裁昭和六一年(オ)第二六〇号同六二年九月二日大法廷判決・民集四一巻六号一四二三頁参照)。したがって、別居期間が相当の長期間に及んだかどうかを判断するに当たっては、別居期間と両当事者の年齢及び同居期間とを数量的に対比するのみでは足りず、右の点をも考慮に入れるべきものであると解するのが相当である。 |
具体的事案検討 |
前記事実関係によれば、上告人と被上告人との別居期間は約八年ではあるが、上告人は、別居後においても被上告人及び子らに対する生活費の負担をし、別居後間もなく不貞の相手方との関係を解消し、更に、離婚を請求するについては、被上告人に対して財産関係の清算についての具体的で相応の誠意があると認められる提案をしており、他方、被上告人は、上告人との婚姻関係の継続を希望しているとしながら、別居から五年余を経たころに上告人名義の不動産に処分禁止の仮処分を執行するに至っており、また、成年に達した子らも離婚については婚姻当事者たる被上告人の意思に任せる意向であるというのである。そうすると、本件においては、他に格別の事情の認められない限り、別居期間の経過に伴い、当事者双方についての諸事情が変容し、これらのもつ社会的意味ないし社会的評価も変化したことが窺われるのである(当審判例(最高裁昭和六二年(オ)第八三九号平成元年三月二八日第三小法廷判決・裁判集民事一五六号四一七頁)は事案を異にし、本件に適切でない。)。 |
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