親子間稀有不存在の確認は、「妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことが客観的に明白である場合」に請求することができるとされています。具体的には、夫が長期の海外出張,受刑,別居等で子の母と性的交渉がなかった場合などが親子関係不存在確認請求の典型例として挙げられています。
下記の事案は、判旨だけを読むと古い事案のように思えるのですが、最近の裁判例です。
親子関係不存在確認請求控訴事件
名古屋高等裁判所平成22年(ネ)第939号
平成23年1月20日判決
右一の事実によれば、A男は、応召した昭和一八年一〇月一三日から名古屋港に帰還した昭和二一年五月二八日の前日までの間、B女と性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである。そして、右一の事実のほか、昭和二一年当時における我が国の医療水準を考慮すると、当時、妊娠週数二六週目に出生した子が生存する可能性は極めて低かったものと判断される。そうすると、B女が上告人を懐胎したのは昭和二一年五月二八日より前であると推認すべきところ、当時、A男は出征していまだ帰還していなかったのであるから、B女がA男の子を懐胎することが不可能であったことは、明らかというべきである。したがって、上告人は実質的には民法七七二条の推定を受けない嫡出子であり、A男の養子である被上告人が亡A男と上告人との間の父子関係の存否を争うことが権利の濫用に当たると認められるような特段の事情の存しない本件においては、被上告人は、親子関係不存在確認の訴えをもって、亡A男と上告人との間の父子関係の存否を争うことができるものと解するのが相当である。